今回は2025年2月14日に実施された慶應義塾大学・商学部・論文テストの解答と解説を掲載していきたいと思います。個人的に、慶應義塾大学・商学部・論文テストは数式を利用した計算問題が出題がされていたりと、興味深い題材であるため、毎年問題を研究しています。そこで、今年度は特別に解説をブログで公開をしたいと思います。また、ここまで詳しい解説は赤本がまだ出版されていないので最速で、詳細の解説は有料級と言ってもいい内容となっていますので、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
本文と問題は著作権の都合でこちらに掲載することは出来ないので、以下のアクセスにリンクで確認をしてください(期間限定公開なのでご注意ください)。期間が過ぎている場合は、今後出版される赤本などでご確認をください。
大問1 (59点)
問1【(1)(2)】19 【(3)(4)】17 【(5)(6)】21 【(7)(8)】15 【(9)(10)】16
問2【(11)】1 【(12)】5 【(13)】3
問3 【(14)(15)(16)(17)(18)】00001 【(19)(20)(21)(22)(23)】 09999 【(24)(25)(26)(27)(28)】00001
問4 【(あ)】未知 【(い)】評判
問5 【解答例】食糧を最大限有効活用している(14字)
問6 【解答例】市場経済化が進んでいる社会はフェアな取引が文化規範である (28字)
【解説】
問1 空欄適語補充問題(3点×5 = 15点)
【(1)(2)】・【(3)(4)】
第2段落は「災害で多くの負傷者が出た場合に限られた医療資源をどのように有効活用をするか」を述べていることから、このような内容を言い換えているのが空欄を含む文であるので、【(1)(2)】「有限 (19)」となり、対となる語句が空欄【(3)(4)】に入るので、「無限(17)」が正解となる。
【(5)(6)】
空欄直前では「医療現場でトリアージを用いるために「搬送や治療を行う緊急度の高い順に、赤色のタグ>黄色のタグ>緑色のタグ>白色のタグ」としており、「赤色から優先的に搬送・治療を行うこと」になるため、空欄【(5)(6)】に入るのは「優先的(21)」が正解となる。
【(7)(8)】
空欄直後から空欄に入るのは形容詞であり、「アメリカ・ヨーロッパ・日本などの大規模産業社会だけでなく、南アメリカやアフリカ・東南アジア島嶼部でも最終通告ゲームの実験を行った」と述べられており、その結論として「統計的に説明された」ことになるので、空欄に入るのは「統計的(15)」が正解。
【(9)(10)】
空欄直前に「誰に対しても等しく振る舞う」とあるので、「平等主義者」を空欄に入れたいが、選択肢にはないので、この用語と言い換えができる「普遍主義(16)」が正解。
問2 接続詞挿入問題(4点×3=12点)
【(A)】
空欄直前では「常識的に考えれば、そこにはなんの驚きもありません」と述べているが、空欄直後では「経済学の伝統的なホモエコノミクス(経済人)モデルからすれば驚きと言えます」と述べているので、空欄前後では異なる内容を述べていることから、逆接の接続詞「しかし(1)」が正解となる。
【(B)】
追加の接続詞「また」を入れることになるが、他の接続詞よりも解答を選ぶ判断の根拠としては難しいので消去法で解答を選ぶことになるだろう。ちなみに、本文では「最終通告ゲームの追加説明」を空欄直後で説明をしているので、追加の接続詞「また (5)」が正解となる。
【(C)】
空欄直前では「実験結果を見ると、15の小規模社会における分配には極めて大きなばらつきがあることが分かりました」と述べられており、その具体化として「南米ペルー」の事例を空欄直後で述べられていることから、具体化を表す接続詞「たとえば(3)」が正解となる。
問3 空欄数値挿入問題(4点×3=12点)
空欄直前で「自分の利得を最大化することにしか注意を払わないホモエコノミクスと仮定する」と述べられており、最終通告ゲームで提案を拒否してしまえば全く利得を得られることが出来ないことから、自分の利得が最大化であることだけを考えれば1円以上のいかなる金額にも受け入れることになる。よって、空欄(ア)には【(14)(15)(16)(17)(18)】は00001が正解となる。そのため、相手がホモエコノミクスであると分かれば、「自分に9999円、相手に1円」の分配をすることになるので、空欄(イ)には【(19)(20)(21)(22)(23)】は09999、空欄(ウ)には【(24)(25)(26)(27)(28)】は00001が正解。
問4 空欄適語挿入問題(4点×2=8点)
空欄を含む8段落に着目をすると、「市場経済化が進んでいる社会はフェアな取引が文化規範となっている」と述べられており、「市場の取引とは無縁の社会では血縁や特定の相手を重視する」と対比している。空欄を含む文は「市場経済化が進んでいる社会」を説明していることを考慮に入れて、空欄に着目をすると、空欄【(あ)】には、「市場経済化社会」は「市場の取引とは無縁の社会が特定の相手と取引をすること」に比べて、さまざまな取引相手が存在することから、「(不特定)多数」が空欄の候補となるが、多数は少数の対比であるが「市場の取引とは無縁の社会が「少数取引」」であることは述べられていないので、
「特定」の対比である「未知(※5段落の第2文)」を空欄に入れる。次に空欄【(い)】は、「市場の取引とは無縁の社会では、血縁や特定の相手を重視することから、直近では得をしても、長い目で見ると取引相手として選ばれなくなる」と述べられており、この内容の対比が空欄を含む文であるため、「関係」が空欄の候補となるが、「長期的な関係と短期的な関係」の対比であれば良いが、「関係」だけであると段落全体を考えたときには最適とは言えないので、「長い目で取引相手として選ばれるためには、フェアな取引を行うことで、文句や評判を下げたりしないことであること(最終通告ゲームが具体例)」になるので、空欄には「評判(※6段落の第4文)」を空欄に入れる。この設問のポイントは「最も適切な語」を選ぶ問題であるため、本文の空欄だけをみれば「多数」や「関係」も正解としてなり得るが、最も適切な語と言われたときには正解にはならない。空欄と本文全体の内容の2つの観点で解く必要がある設問である。
問5 理由説明問題(6点)
本文において、「功利主義は最大多数の最大幸福(=社会全体の幸福や富の総量をできるだけ大きくすること)」と述べており、この内容を具体化しているトラックの食糧分配を説明するのが本問である。
【事例】「1000キロの食糧を積んだトラックが災害に襲われた地域に向かう」
→「しかし400キロの食糧が腐ってしまう」
【前者】「配給される総食糧は600キロに減るが、全員に食糧を供給できる」
【後者】「途中でトラックを止め、地域の70%の住民にすべての食糧を供給すれば、配給される総食糧は1000キロの食糧を供給できる」
【前者】よりも【後者】の方が、功利主義であるのは、「限られた食糧を無駄なく使用している」のは【後者】であり、功利主義という観点からも「社会全体の利得」は【後者】の方が多いことが読み取れる。以上のことから、15字以内にまとめると、「食糧を最大限有効活用している(から)【14字】」が解答例。
問6 理由説明問題(6点)
今回の設問のポイントは「本文の論旨(文章や議論において中心となる伝えたい内容)からみて」と問題文に指示があることに注意が必要である。前段落の最終通告ゲームでは、自分と相手の利得が平等であれば受け入れるが、自分の利得が相手よりも極端に少ないときには受け入れないということは、「相手の利得と比較をして、自分の利得が誠実であるかを考える(ため)(28字)」と解答を作成することが出来るが、下線部の理由説明としては正しいが本文の論旨を踏まえていないため減点は避けられないだろう。本文では最終通告ゲームは具体例として挙げられており、実社会では「平等な分配は市場経済化が進んでいる社会」を表しており、その理由として、最終段落の第3文では「市場経済化が進んでいる社会ほどフェアな取引が文化規範となっている(32字)」と述べられている。この内容を30字以内でまとめると、「市場経済化が進んでいる社会はフェアな取引が文化規範である (28字)」が解答例となる。
大問2 (51点)
問1 【(29)(30)】17 【(31)(32)】29 【(33)(34)】11 【(35)(36)】13 【(37)(38)】24
【(39)(40)】16 【(41)(42)】15
問2【(43)(44)(45)】105 【(46).(47)】4.5
問3 ④
問4 【(49)(50)(51)】115
問5 【(52)(53)(54)】135
問6 【(55)(56)(57)】135
問7 【解答例】比較時における消費者の行動を考慮に入れていないこと(25字)
【解説】
問1 空欄適語補充選択問題(3点×7=21点)
【(29)(30)】
空欄直前では「物価指数は物価の動きを主観的な感じ方ではなく」とあるので、「主観的」の対比の語句を空欄に入ることから、空欄【(29)(30)】「客観的(17)」が正解となる。
【(31)(32)】
空欄を含む段落では、3品目の平均と加重平均を比較した場合に、加重平均よりも3品目の平均は簡単に求めることが出来ることから、選択肢の中から適語を考えると、「単純 (29)」が正解となる。また、第1段落第13文では「単純に平均をすると(ア)となります」とあることから、単純を入れることの手掛かりにはなるだろう(この箇所だけで「単純」であることを想定することは根拠が薄いだろう)。
【(33)(34)】
空欄を含む次の文では、「各品目の全体に占める支出額の割合を加味する(=「言い換え」)ウエイトを付けて平均する計算方法を加重平均といいます」と述べていることから、空欄はこの内容の言い換えであることから、空欄【(33)(34)】「ウエイト(11)」が正解となる。
【(35)(36)】
知識問題として、「為替市場は市場における需要と供給のバランス」によって決まることから、「バランス(13)」が正解。また本文では「為替相場は、外国為替市場において異なる通貨が交換(売買)される際の交換比率である」と述べられており、この内容の言い換えであるため、解答を選ぶことが出来る。
【(37)(38)】
空欄直前では「円と他の通貨」を比較しているので、空欄には比較を表すことのできる「形容詞」が入ることを考慮に入ると、空欄【(37)(38)】「相対的(24)」が正解となる。
【(39)(40)】
10000円をドルに交換をした場合、1ドル80円のときには125ドル、1ドル100円のときには100ドルになるので、1ドル100円の場合に比べて1ドル80円の方が同じ金額でもドルに替えられる額は多いので、円の価値は高いことを意味している。よって、空欄【(39)(40)】「円高(16)」が正解となる。
【(41)(42)】
10000円をドルに交換をした場合、1ドル125円のときには80ドル、1ドル100円のときには100ドルになるので、1ドル100円の場合に比べて1ドル125円の方が同じ金額でもドルに替えられる額は少ないので、円の価値は低いことを意味している。よって、空欄【(41)(42)】「円安(15)」が正解となる。
問2 空欄数値挿入問題(4点×2=8点)
【(ア)】
「米・牛肉・カレールウの3品目の物価指数の平均」に関する設問。本文より、「米が基準時の100に対して80、牛肉は20%値上がりして120、カレールウは15%値上がりして115」となったので、求める平均は「(80+120+115)÷3 = 105」。以上のことから、空欄【(43)(44)(45)】は105が正解となる。
【(イ)】
「米・牛肉・カレールウの3品目の物価指数の加重平均」に関する設問。本文より、「米が基準時の100に対して80、牛肉は20%値上がりして120、カレールウは15%値上がりして115」、「3品目の支出額の割合が、米6対、牛肉3対、カレールウ1であった」と述べているので、求める平均は「(80×0.6+120×0.3+115×0.1)÷3 = 95.5」。空欄には「基準時と比較をしてどの程度下落をしているのか」を入れるため、100-95.5=4.5。以上のことから、空欄【(46)】.【(47)】は4.5が正解となる。
問3 空欄選択数式問題 (4点)
本文ではラスパイレス指数は「買物かごの商品と数値を決めて固定をしたときに、比較対象となる年について費用を求めて、比較時の費用を基準時の費用で割り100倍する」と述べられているので、この内容を数式で表しているものを選ぶことになる。ここで文字を整理すると、「p :単位数量あたりの価格、q:購入数量、t :比較時、0:基準時」であることに注意をしながら整理する。また、設問で「基準時における支出額はp0,i q0,iである」と述べられている。他の選択肢と比較をしたときに、「比較時における支出額」が分かれば解答を選ぶことが出来て、購入数量は基準時と変われないことに着目するとq0,i になることに注意をすれば、「pt,i q0,i」と表すことが出来る。以上のことから、④が正解となる。
問4 数値計算問題(4点)
ラスパイレス指数の数式は問3より、(Σpt,i q0,i÷Σp0,i q0,i)×100であることから、この式に代入して計算をする。
(分子)=Σpt,i q0,i = 600×10+300×5+200×20 = 11500 (※牛肉の単位には注意)
(分母)=Σp0,i q0,i =500×10+200×5+200×20 =10000 (※牛肉の単位には注意)
以上のことから、ライパレス指数の数式に代入すると、(11500/10000) ×100 = 115【(49)(50)(51)】が正解。
問5 数値計算問題(4点)
円・ドル相場が100gあたり2ドルから100gあたり3ドルに変わるときには、「米国から輸入した牛肉」は100gあたり300円となる。以上のことから、問4と同様にラスパイレス数式に代入して計算をする。
(分子)=Σpt,i q0,i = 600×10+300×5+300×20 = 11500 (※牛肉の単位には注意)
(分母)=Σp0,i q0,i =500×10+200×5+200×20 =10000 (※牛肉の単位には注意)
以上のことから、ライパレス指数の数式に代入すると、(13500/10000) ×100 = 135【(52)(53)(54)】が正解。
問6 数値計算問題(4点)
米・りんごは円で表されているので、牛肉も円に換算して計算をする必要がある。そこで、基準時と比較時の米国における牛肉の価格は、100gあたり2ドルなので、2kgでは40ドルの費用がかかる。よって、1ドル100円のときに2kgの牛肉を購入するときは100円×40ドル=4000円、1ドル150円のときに2kgの牛肉を購入するときは150円×40ドル=6000円。以上のことから、ライパレス数式に代入する。
(分子) =Σpt,i q0,i = 600×10+300×5+6000(※150円×40ドル)= 13500
(分母)=Σp0,i q0,i = 500×10+200×5+4000(※100円×40ドル)= 10000
以上のことから、ライパレス指数の数式に代入すると、 (13500/10000) ×100 = 135【(55)(56)(57)】が正解。
問7 本文論旨説明問題(6点)
本文の論旨を踏まえ「ライパイレス指数の短所」を25字以内で説明する設問。答案を作成するにあたって、設問中に「ライパイレス指数は買物かごの中の商品の数量を基準時で固定する」とあり、基準時に固定することの弊害を考えればよいので、「比較時に購入をした商品の数量を考慮できないこと(23字)」や「基準時に購入をしなかった商品を比較できないこと(23字)」を挙げることが出来る。しかし本問では「本文の論旨を踏まえて」とあるので、「ライパイレス指数の短所を述べている」に過ぎない解答になってしまうと判断される可能性があるため、これらの短所が本文の内容を踏まえた答案を作成する必要がある。そこで、第2段落第5・6文にあるように「ライパレス指数は物価の変化を測れることを目的としているが、買物かごの内容(消費者の行動)を反映していないこと」が述べられているので、解答例は「比較時における消費者の行動を考慮に入れていないこと(25字)」となる。
【総括】
昨年度よりも取り組みやすい題材・問題であった。題材としては、大問1が2018年度慶應義塾大学経済学部の小論文に類題が出題されていることや分配に関するテーマは頻出であるため、受験生は取り組みやすかったと思われる。大問2に関しても、消費者物価指数を題材としており、例年に比べて取り組みやすい内容だった。また、問題形式としては、空欄補充の日本語を入れる問題が選択肢が減ったことにより選びやすい出題になっていたり、大問2の計算が必要とする問題も平易であるため解きやすかった。一方で、大問2の問3は問4から問6に連動をしていることから、条件を読み間違えると連続で失点をしてしまう可能性もあるので、注意が必要であった。以上のことを踏まえると、客観式問題では、比較的易しいので点数を取ることが出来るので、記述問題が出来たかどうかで差がつきそうであることから、昨年度の受験者平均点は64.03点であったが、今年度の受験者平均点は70点前後になるだろう。