今回は2026年2月14日に実施された慶應義塾大学・商学部・論文テストの解答と解説を掲載していきたいと思います。個人的に、慶應義塾大学・商学部・論文テストは数式を利用した計算問題が出題されていたりと、興味深い題材であるため、毎年問題を研究していきます。そこで、今年度も昨年度と同様、特別に解説をブログで公開をしたいと思います。また、ここまで詳しい解説は赤本がまだ出版されていないので、おそらく最速で、詳細の解説は有料級の内容となっていますので、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
本文と問題は著作権の都合でこちらに掲載することは出来ないので、以下のアクセスにリンクで確認をしてください(期間限定公開なのでご注意ください)。期間が過ぎている場合は、今後出版される赤本などでご確認をください。なお、配点は大学が公表をしていないため、予想配点になりますのでご注意ください。
大問1【解答・解説編】(60点)
問1 【(1)(2)】18 【(3)(4)】26 【(5)(6)】21 【(7)(8)】11 【(9)(10)】28 【(11)(12)】27
問2 【(13)】4 【(14)】2 【(15)】3 【(16)】8
問3 【(ア)】逆方向 【(イ)】名前 【(ウ)】一般化 【(エ)】言語
問4 【解答例】 論理的には正しくない過剰一般化である(ため。)(17字)
問5 【解答例】 意味を知っている単語が少なく、音の塊としての単語を認識する(ため。)(29字)
問1 空欄適語補充問題(4点×6=24点)
【(1)(2)】
本文全体の論旨とも関わる設問でもあるが、空欄直前で「チンパンジー「アイ」は訓練を受けて、異なる色の積み木にそれぞれ対応する記号(絵文字)を選ぶことができる能力があること」を述べているが、空欄直後で「異なる記号にそれぞれ対応する積み木の色を選ぶことが全くできなかった」と述べられている。つまり、チンパンジー「アイ」は「積み木の色→記号」を記憶していても、「記号→積み木の色」を選ぶことは出来ないということになり、また空欄直後で「私たちはできると予測していたが出来なかった」と述べられていることから空欄には「18 衝撃的」を入れることになる。結果論ではあるが、3段落の第1文で「筆者は、この事実に驚愕し、興味を掻き立てられた」と述べられていることも、空所に「衝撃的」という言葉を入れる根拠となる。
【(3)(4)】
空欄直後の第4段落では「この実験の方法は、AはXであると教えたときに、子どもが同時に逆方向も学習できており、XはAであると「教わる」ことを想定しているのだ」と述べられている。このことから、「ネケ」という言葉と対象物の双方向のやりとりが出来ることを前提としているため、空欄には「普通」や「一般的」という言葉が入ることになるので、選択肢で最も適切な表現は「26 標準的」を入れる。
【(5)(6)】
前段落や空欄直後に着目をすると、「記号と対象の関係では、どちらかの方向(記号A→対象X)の結びつきを学んだら、その結びつきを逆方向(対象X→記号A)に想定する必要がある」と述べられている。この内容を踏まると、空欄には【(5)(6)】に「21 双方的」を入れることになる。
【(7)(8)】
第10段落で「実験では、ヒトの乳児は、ことばの意味を覚える以前から、学習したことを逆方向に一般化するバイアスを持っているのに対して、チンパンジーは対称性推論を行わないという結果をしました」と述べている。このことは、「生まれながらヒトは対称性推論を行う」ことを実験で示されており、生得説である「仮説1」であることを検証したことになるので、空欄【(7)(8)】に「11 (仮説)1」を入れる。
【(9)(10)】
空欄を含む文章では「対称性推論をヒトという種が突然するようになったのは、突然変異のようにして起こったのか、それとも徐々に【(9)(10)】に生まれたものなのかという疑問が残る」と述べられており、「突然変異」と反対語が入ることや最終段落最終文で「進化の過程で徐々に形成されていったものであるという可能性が浮かび上がってくる」とあるので、この内容を言い換えになるので、空欄には「段階的」といった言葉が想定されるが、選択肢にはないことになる。選択肢の中で最も適切なものを探すと、消去法で考えると、「28 連続的」になるので、空欄【(9)(10)】は「連続的」が正解となる。
【(11)(12)】
空欄の直後に着目をすると、名詞が入ることから選択肢は「22 挑戦、25 発展、27 萌芽」のいずれかが入ることになる。次に文意を考えると、空欄直前では「チンパンジーの中にもごく少数であるが対称性推論ができる個体が存在する可能性が示唆されていることから、人間も進化の過程で徐々に形成されたこと」が述べられている。以上のことから空欄には「27 萌芽(※新しい物事が起こりはじめること。また、物事の起こるきざし。)」を入れることになる。空欄前後をみると、「25 発展」も空欄として入れてもよいが、最も適切な語句と考えた場合は、「27萌芽」の方が適切と言えるため解答にはならない。
問2 接続詞空欄補充問題(3点×4=12点)
設問条件から、同じ選択肢は2回以上使用することが出来ないことに注意が必要だが、本設問を解いていくと「つまり」を入れることのできる空欄は【(A)】・【(B)】・【(C)】の候補として挙がるため、どこに「つまり」を空欄に入れるかどうかを吟味することが重要となる。また、今回の設問では空欄【(D)】の次に空欄【(C)】は根拠を取りやすいので、消去法も使いながら設問を解くことが解法の鍵となる。
【(A)】
結果論から言えば、空欄直後の内容は「名前というのは、形式(ことばの音や文字)と対象の間の双方向の関係から成り立っている洞察」という本文の主題であることを踏まえて、他の空欄で「つまり」・「だが」・「もちろん」を使用していることから、消去法で考えると「4:ところで」が正解となる。解答の決め手が薄いため、消去法を上手に使っておかないと解答することが出来なかった問題だった。
【(B)】
空欄直前では、「ことばの形式と対象の間に双方向の関係が成り立つ」に関する説明となっているが、空欄直後では「人間にとっては成り立つが動物にとっては当たり前ではない」と述べられている。空欄前後では、逆接の内容であることから(本文の主題でもある)、「2:だが」が正解となる。
【(C)】
空欄直前では「AはXであると教えたときに、子どもが同時に逆方向も学習できており、XはAであると「教わる」ことを想定しているのだ」と述べており、空欄を含む文章では、この内容を具体化していることから、空欄には例示や言い換え表現があることから選択肢の中から適切なのは「3:つまり」が正解となる。他の選択肢で入れられるものがないため、「つまり」を選択するという解き方であった。
【(D)】
空欄を含む箇所では「これは【(D)】、筆者たちがはじめて考えた仮説ではない。動物の思考を研究する研究者たちがずっと昔から指摘したことだ。」と述べられており、次の文とは順接の関係で後ろの文を強調している。また、「これは」の後ろに入る語句として適切なのは「8:もちろん」が正解となる。
問3 空欄挿入問題(3点×4=12点)
【(ア)】
問1【(1)(2)】の設問と関連をするが、空欄を含む文では「訓練された方向での対応づけ「積み木の色→記号」は記憶していても、「記号→積み木の色」の対応づけ」が出来ないことを空欄【(ア)】に補い、言い換えることになる。以上のことを踏まえると、空欄には「逆の対応づけ」といった内容が入ることを想定して、本文中から3文字で探すと、第4段落の第1文にある「逆方向」を入れることになる。
【(イ)】
空欄を含む4段落では、「黄色い積み木はKIIROであると考えたとき、KIIROという音は黄色い積み木を指すと思いこむことを想定している」と述べており、逆方向の一般化に関する説明である。この内容は第1段落にある本文の主題である「形式(ことばの音や文字)と対象の間の双方向の関係で名前は成り立っている」と述べられていることから、空欄には第1段落第3文の「名前」を入れることになる。
【(ウ)】
前段落では「一般化の論理的には「AならばX」や「XならばA」は正しくない」と述べられているが、空欄を含む文章では「「記号Aならば対象X」の結びつきを学んだら、その結びつきを逆方向である「対象X→記号A」である」ことを想定できるということから、空欄には仮説や推論という言葉が想定されるが、問題文の条件から3文字で答えることから、4パラ最終文にある「一般化」を入れることになる。
【(エ)】
第10段落の実験結果から、「人間が言語を持ち、人間以外の動物種が言語を持たないのは、言語というものを習得し、運用するために必要な認知バイアスおよび認知能力の違いなのかもしれない可能性を支持する」ことになると述べられている。人間と人間以外の動物を区別するための手段として言語を持つか持たないかということであり、空欄を含む文章の言い換えとなっているので、「言語」を入れる。
問4 下線部理由説明問題(6点)
下線部を含む5段落では「「AならばX」は「XならばA」を一般化することは論理的に正しくはなく、人間が言語を学ぶときに当然だと思われるこの想定は論理的には正しくない過剰一般化であり、このような前提と結論をひっくり返してしまう推論である」と述べられている。これらの内容を踏まえて、20字以内に解答例を作成すると、「論理的には正しくない過剰一般化である(ため。)」(17字)、「仮定と結論を入れ替える対称性推論である(ため。)」(19字)となる。
問5 下線部理由説明問題(6点)
第9段落で設問の「なぜ生後8か月のヒト乳児を実験の対象」としているかについて、「生後10~12か月くらいまでの赤ちゃんは母語の音の分析をして、音の塊としての単語の切り出しを言語学習の中心としているので、意味を知っている単語は非常に少なく、また、意味の学習をするための手がかりもまだ学習していないと考えられるから」と述べている。この内容を30字以内にまとめることから、解答例は「意味を知っている単語が少なく、音の塊としての単語を認識する(ため。)(29字)」となる。
大問2【解答・解説編】(40点)
問1 ② 問2【(18)(19)】48 【(20)(21)】50 【(22)(23)】15
問3 【(24)(25)】13 【(26)(27)】21 【(28)(29)】54
問4【解答例】安全面ではなく消費者の嗜好に合わせて賞味期限が短くなっている(30字)
問5 【解答例】安全面よりも消費者の嗜好である食感で設定されている(25字)
問1 グラフ適語挿入問題(4点)
知識でも解くことは出来てしまいますが、本文では第1段落の第3文で「消費期限は「食べても安全な期限」であり、賞味期限は「おいしく食べられる期限」」と述べられていることから、ある期間から安全に食べられる限界を超えるのが「消費期限」であるため、(A)は消費期限となる。また、品質は低下をしているが安全に食べられる限界を超えていないのは「賞味期限」であるため、(B)は賞味期限となる。以上のことから正しい組合せは、②(※ (A) 消費期限 (B) 賞味期限)が正解となる。
問2 指数計算に関する問題(4点×3=12点)
【(18)(19)】
1個の菌は30分後に21=2個の増殖することから、24時間後(=30分×48時間後)には248個となる。以上のことから空欄【(18)(19)】は48が正解となる。
【(20)(21)】・【(22)(23)】
【(18)(19)】と同様に考えると最初の細菌数が4個の場合は30分後に4×21=8個に増殖することから、24時間経過をすると、4×248個となることから、4×248=22×248=250(※指数法則)となる。以上のことから空欄【(20)(21)】は50が正解となる。250を計算することになるが、問題文で210=1024と与えられており、210=1024 = 1.024×103であることから、250=210×210×210×210×210=(1.024×103)×(1.024×103)×(1.024×103)×(1.024×103)×(1.024×103)=(1.024)5×1015(※指数法則)≒1.13×1015となることから、空欄【(22)(23)】は15が正解となる。
問3 数値代入問題(4点×3 = 12点)
D = 86.9-4.1×T+0.05×T2に代入をして計算することになる。まず、【(24)(25)】はT=27を代入すると、D = 86.9-4.1×27+0.05×(27)2= 86.9-110.7+36.45=12.65、小数第一位を四捨五入すると13となるので、【(24)(25)】は13が正解。次に【(26)(27)】はT=22を代入すると、D = 86.9-4.1×22+0.05×(22)2= 86.9-90.2+24.2=20.9、小数第一位を四捨五入すると21となるので、【(26)(27)】は21が正解。さらに【(28)(29)】はT=9を代入すると、D = 86.9-4.1×9+0.05×(9)2=86.9-36.9+4.05=54.05、小数第一位を四捨五入すると54となるので、【(28)(29)】は54が正解。
問4 下線部理由説明問題 (6点)
下線部(A)は「保存がきく食品の賞味期限が、味が落ちるかどうかで期限が決まっている場合がある」と述べられている。また、1段落の最終文であることからも本文の主題になってくることも予測されて、下線部(A)の具体例として、5段落で「生野菜」について述べられている。生野菜の例では、6段落第6文で「安全よりも食感が理由となってより厳しい期限が設定されている」と述べられており、この内容をまとめたのが第7段落で「消費者の嗜好に合わせるために安全面では問題ないのにもかかわらず、期限が短くなってしまう」と述べられている。以上のことを踏まえると、解答例は「安全面ではなく消費者の嗜好に合わせて賞味期限が短くなっている(という問題が生じる。)」(30字)が解答例となる。
問5 下線部理由説明問題 (6点)
問4は要旨に関する内容で、問5は本文で具体例として述べられている「生野菜」が「賞味期限のような消費期限と述べられている理由」を25字以内に述べる問題である。解答作成の方向性は問4と同様であるが、より具体的に説明できているかはポイントとなる。該当箇所は第6段落最終文で「安全よりも食感が理由となって、より厳しい期限が設定されている」と述べられていることから、この内容を25字以内でまとめると、「安全面よりも消費者の嗜好である食感で設定されている(ため。)(25字)」が解答例となる。
【講評】
今年度の問題数は26題であり、2024年度が30題、2023年度が40題であったため、昨年度よりも問題数は減少した。近年の問題数減少を考えると、1問の失点が大きく合否に影響をすると言える。また昨年度よりも問題が解きやすくなっていることや数理的要素の設問は減少している。そのようなことを踏まえると、受験者平均点も昨年度の57.22点よりは増加をして61点前後になることが予想される。昨年度と比べれば、ほぼ同水準よりも少し易しくなった印象ではるが、過年度と比較をすれば易化している。また、指数関数の問題は2022年度に出題されているため、過去問をやったことがある人は簡単に解けただろう。一方で、今年度も暗号化に関する問題は出題されなかったが、過去3年間出題をされていないため、そろそろ出題をされてもよいところである(2023年度に出題)。暗号化に関する問題が出ると、合格最低点が下がる傾向にあるため、次年度受験をする方には、今年度や昨年度を基準とするのではなく、2023年度以前の過去問も取り組んでもらいたい。また、記述問題は過去の出題を見ても「何を記述するべきか」は明確であるため、特別な対策はいらないだろう。一方で、今年度の入試では、第1問の問2の接続詞を入れる問題は難易度が高く解きにくかった受験生も多く、消去法が使えないと失点が多かったことが考えられる。以上のことも踏まえると、慶應義塾大学・商学部・論文テストは独自の入試であるため、高得点を取るためには、基礎学力をつけた上で、過去問を活用して、いかに準備をしておくかが重要となるだろう。
【参考リンク】