朝日新聞出版から出版されている4月27日発売の週刊雑誌AERAで「予備校は消えるのか」という題材で記事が掲載されました(WEB記事でも閲覧可能)。この記事では、教育ジャーナリストで今年2月に「予備校盛衰史(NHK出版新書)」を出版した小林哲夫さん、長年予備校の教壇に立ち現在代々木ゼミナール講師の西谷先生、ただよびや武田塾など教育系YOUTUBEを行っている森田先生の記事が掲載されています。予備校という存在が過去から現在でどのように変容しているのかやさまざまな視点で書かれているところは興味深い内容となっていました。今回はこの記事を元に、今後の予備校が歩む道はあるのかを教育業界で働いて感じていることも踏まえながら、考察していきたいと思います。
予備校業界は少子化や大学入試の多様化や現役志向の増加で価値観が変わることで、予備校は厳しい状況なっているのはご存知の方も多いと思います。その中で、2015年に代々木ゼミナールが全国20校舎を閉鎖したことで、世間でも大きく話題となりました。このように過去と同じような予備校はなくなっているなかで、この記事ではその現状も述べられており、かつての活気が薄れていることが語られています。例えば、1980年代の後半では当時代々木ゼミナール現代文講師であった出口汪先生によると予備校の最盛期には「講義は午前9時から始まるのですが、シャッターが8時に開くと同時に、その1~2時間前から待っていた生徒が一斉に8階まで駆け上がって教室に入り、最前列の席に座るのです。講義が始まる頃には、450人収容の教室は立ち見の生徒であふれ、その熱気たるやすごかったですね」と述べられています。他にも、現在代々木ゼミナール英語講師西谷昇二先生は、「1980年~90年代は当時代々木校で一番大きかった63B教室は500人以上入るけどそこも満席」と述べられています。このように考えると、昔と今は大きく変わり、現在では450人や600人を収容する予備校はないし、どんなに大きい予備校でも150人前後が最大規模が現状と言えるでしょう。このように生徒数も変われば、昔はコンサートでも会場の大きさや活気によって作り出す空気感が醸し出すものはありますが、今は規模感からも変わってきていると言えるでしょう。
また、時代の流れもあり生徒の変化にも大きく影響をしており、森田鉄也先生によると「今の集団授業では昔のような毒舌は通用しない。」と述べられています。予備校全盛期に代々木ゼミナールで授業をしていた英語講師は、「授業の予習はテキストの予習もしますが、どれだけ生徒を引きつける雑談を考えていくのか」も大切にしており、雑談を考える予習の方が大変だったと言っていました。それだけ、生徒を飽きさせない授業が大切であり弱肉強食の世界であったことを物語っています。一方で、現在私は教育業界で働いていますが、対面授業の場合、毒舌や雑談が多い授業は好まれないし、授業時間の延長やテキストが終わらないことがあれば、生徒や保護者からクレームが入ります。コスパやタイパを重視する時代だからこそ、顧客が求められているニーズを感じ取らないといけないと思います(講師の方は時代の流れを分かっていない方も多く、過去のやり方にこだわって生徒がどんどんいなくなるということに対して、反省をしない講師を雇わなければいけない講師を排除できないのは、自分の働いている組織の問題だと思いますが)。このように考えていくと、映像授業が台頭していく中で、対面授業の場合はどのように差別化を打ち出していかないと残っていくことが難しい環境になっていると言えるのでしょう。そんな中で、どのように生き残っていくのか顧客に価値提供ができるかどうかは大切となってくるでしょう。
ここまで予備校の過去と現状について語っていきましたが、最後に予備校の未来や今後の在り方について語ってみたいと思います。まずは「予備校は消えるのか」という私なりの解答としては「消えることはないが規模は縮小しながら形式が違う形で残り続ける」と思います。どれくらい規模は縮小するのかと言えば、これから10年後には予備校は「札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・博多」のような主要都市規模になり、オンライン化が進んでいき通信制高校のような存在になっていくように思います。また、私が教育業界で働いて感じるのは「個」に対するアプローチをより保護者を中心として求められており、勉強計画を立ててくれるや管理してくれることまで求めています。このような生徒に対して、今までの予備校は「ここまでは出来ません」と断っていましたが、顧客を選んでいることが出来ない時代にも差し掛かっています。つまり、昔の予備校は、一流の授業を受講したいことが目的で生徒が来ていましたが、そうではなくなりました。その背景には、インターネットの普及によるYOUTUBE、ただよび、スタデイサプリ、学研プライムゼミなどのオンラインで一流の授業を受けられるようになり差別化が出来なくなってきたこともあるでしょう。このような時代背景から、集団では対応が難しかったことに答えていくことが、予備校が生き残るための鍵となっているのかもしれません。
【参考文献】
【予備校は消えるのか】年収億超えのカリスマ講師が競い合い、大教室には“立ち見”の受験生も…当時の講師が明かす「予備校熱狂時代」の“異様な空気” | AERA DIGITAL(アエラデジタル)