今年最後のブログ投稿になりますが、今回は慶應義塾大学から先日発表された、「2027年度から慶應義塾大学経済学部の入試が小論文を休止すること」を題材に、入試の変更点や大学の狙いを考察していきたいと思います。
まずは、従来の慶應義塾大学経済学部の入試(2026年度までの入試)では、A方式(募集人員:400名)が英語(配点:200点)・数学(配点:150点)・小論文(配点:70点)、B方式(募集人員:200名)が英語(配点:200点)・地理歴史(配点:150点)・小論文(配点:70点)となっており、どちらの方式でも小論文が必須となっており、慶應義塾大学商学部(A方式:英語・地理歴史・数学、B方式:英語・地理歴史・論文テスト(一般的には小論文と位置づけされる))と大きな違いです。また、募集人員も数学受験であるA方式の方が多いということからも、東大や一橋大の最難関国公立大学の受験生を囲みたいという狙いもあるのでしょう。また、募集要項にも記載がありますが、採点方法も特殊で、『A方式は「英語」の問題の一部と「数学」の問題の一部の合計点が一定の得点に達した受験生について、「英語」の残りの問題と「数学」の残りの問題および「小論文」を採点し、B方式は「英語」の一部が一定の得点に達した受験生について、「英語」の残りの問題と「地理歴史」および「小論文」の一部問題を採点」することになっています。慶應義塾大学経済学部の場合は、志願者数も多いですが、英作文や数学の論述式問題も出題されることから、客観式問題で一定の基準を設けて、採点のコストを減らすためにもこのような措置が取られています。このように慶應義塾大学の中でも特殊な入試を行っている中で、「2027年度から小論文を休止する狙い」を考察していきましょう。
この議論に入る前に、慶應義塾大学の経済学部における小論文の出題形式を知っておく必要があるでしょう。試験時間は60分、問題数は2問出題され、1問目が200字の下線部説明や主題に関する問題で、2問目が400字の本文に関連するあなたの考えをまとめる問題構成となっています。そもそも、なぜこのような小論文の試験を実施してきた意図を慶應義塾大学は、「特定の科目とは関わらない出題により、志願者の知識、理解力、分析力、構想力、表現力を問うことに努めてきた」と発表をしており、実際にこのようなことを考慮された出題であり、60分で600字と分量が多い理由もこのような背景があるでしょう。しかし、小論文が入試に導入されて、試験対策として身につけた知識や技法が、「大学の学習で役立っていないこと」や「経済学部の出題は全ての科目において、単に知識を問うものではなく、総じて思考力、判断力そして表現力を問うものとなっており、英語や地理歴史の科目では近年、論述問題が一定の割合を占めていること」を受けて、小論文の入試を休止する理由としています。つまり、慶應義塾大学の発表をまとめると、「必要性がなくなったこと」による前向きな休止と言えるでしょう。
ここからは2027年度以降の入試ではどのよう影響を受験生にもたらすのかという観点で説明していきます。今回の入試変更を受ける2027年度以降では小論文を休止する一方で、数学と地理歴史の試験時間と配点を拡大することで、深い思考力を問う出題を行うようになり、英語と同じ試験時間100分で200点に変更することが発表されました。2教科で受験が出来るようになることや小論文がなくなったことで、受験科目という観点で新たに教科を増やさずに、東大や一橋大などの最難関国公立大学志望者の併願による受験者数はより増えることになるでしょう。私も東大志望者(文系生)の生徒と受験校面談をするときに、早慶を練習として受けることを勧めますが、本人に早慶のどちらの大学でも希望がなければ、早稲田または慶應商学部であれば新たに小論文などの対策をせずに受験することが出来るので、提案をすることが多くあります。最難関国公立大学の志望者にとっても、この入試改革により、また1つの選択肢が増えることになるでしょう。ここからはあくまでも私の見解ではありますが、受験者数を増やしたいことや優秀な受験生が欲しいという大学の狙いもあるのかもしれません(おそらくですが、2教科受験による受験者数の増加は出題形式が英作文や論述形式の出題になることからそんなに多くはならないことを予想)。話は少し脱線をしてしまいましたが、時代が変われば入試も変えていく必要があり、学習指導要領の変更は大学入試も大きく変わる傾向にあります。大学入試に限った話ではありませんが、批判されるかもしれない中で、何かを止めることは、大きな決断をしなければいけないことであると思います。リスクに囚われて決断が出来ずに、何も変化をせずに安定をしているのは心理的なストレスもなく楽なことではありますが、時にはこのように決断することも必要ではあるのかもしれません。
【参考文献】