次年度から、一橋大学では約70年ぶりとなる新学部として、「ソーシャルデータサイエンス学部」が新設される。この学部は、社会科学とデータサイエンスを融合した学部であり、文理融合の学部とも言えるでしょう。ここで指している「社会科学」は、経営学・経済学・法学・政治学・心理学などを指しており、さらに「データサイエンス」は統計学・情報・AI・プログラミングを扱っており、幅広い分野を専門的に学ぶことが出来るカリキュラム編成になっている。また、他学部との大きな違いは、「学んだ内容を課題解決」に活かすことを最終ゴールとして位置づけているところも、この学部の特徴的な学部と言えるでしょう。現在、大学の勉強は社会で役に立たないと批判されることもありますが、社会に出て役立つ勉強をしたいという人にはおススメの学部であるかもしれません。このように最難関国公立大学で人気のある大学であるということもあり、注目度も高い学部ですが、一般選抜(入試科目)にもかなり特徴的なものがあります。今回はこの一般選抜(入試科目)について、お話をしたいと思います。
さて、まずは国公立大学の一般的な入試方式は、ご存知の方がほとんどではありますが、共通テストと2次試験で合否判定がされます。そのため、ソーシャルデータサイエンス学部においても、合格者を一番多く受験する、前期日程では、共通テストが240点(外国語 40点、数学1A2B 40点、国語 40点、地歴公民・理科 40点×3)、2次試験 760点 (英語 230点、数学 330点、国語 100点、総合問題 100点)の1000点満点になっています。急ではありますがここまでお伝えをしまして、みなさんは何に注目をしますか。
注目するポイントとして1つ目は、数学の配点が全体の1000点中370点あり、全体の37%を占めており、文系学部で、こんなに高いと思うかもしれませんが、一橋大学ではよくあることです。ちなみに他の学部における数学の得点割合は、法学部が250点/1000点(25%)、経済学部が240点/1000点(24%)、商学部が300点/1000点(30%)、社会学部が150点/1000点(15%)であり、文系でも「数学」の配点がしっかりある大学です。話はソーシャル・データサイエンス学部に戻すと、学部の性質を考慮に入れると、やはり「数学」の配点が高くなり、一橋大学の中でも、数学における配点は一番高く設定されています。
次に着目するポイントとしては、2次試験で「総合問題」の出題があり、他学部では見られない出題形式です。今回のメインでお話をしたいのは、この「総合問題」についてです。実際に、ソーシャル・データサイエンス学部は、「総合問題」を「社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら思考する姿勢を確認するための科目」と定義しており、サンプル問題も公表されています。実際にどのような傾向があるのかを見ていくことにしましょう。(問題は下記の関連リンクからご確認ください)
大問は全部で3題出題をされており、説明問題などの記述問題を中心に、サンプル問題は作成されております。大問1では、数学者ポアンカレの逸話を題材としたデータの推論に関する問題でした。受験勉強では、明確な根拠があり、そこから問題が解けることがほとんどだと思います。それを応用した問題が、推測して読み取れること力になるかもしれません。そのような力を測る問題となっています。次に大問2では、スロットマシンの期待値を学習する手続きに関する問題でした。日常生活と数学の関連性を題材としているテーマとなっており、試行錯誤を繰り返しながら行う実験でもあり、情報処理の理解と取り扱う能力を問うような出題になっている。最後に大問3は、あるゲームを題材として、実際場面での問題解決に数理的な考えを適用する能力を問うような出題となっている。以上の3題から読み取れることは、どの問題においても「数学的思考力」が必要としている出題であることや「説明問題(表現力)」を問うような出題となっている。数学的な要素を出題している、慶應義塾大学・商学部が出題「論文テスト」とはまた違った出題であり、高度な理解を必要としていることが読み取れる。一方で、このサンプル問題を入試で出題された場合は、かなり受験者は出来ない状況になりそうで、そうなれば他教科の勝負で合否が決まってしまうのかもしれません。(※なお、サンプル問題の解答・解説は一橋大学が公表をしており、「関連リンク」のYOUTUBEサイトを参照ください。)
このように「一橋大学・ソーシャル・データサイエンス学部」を見ていきましたが、新設学部の場合は、どのくらい受験者が集まるのか予測することは難しいです。そのようなこともあり、新設学部は例年に比べて入りやすい結果になることもよくあります。さて、ソーシャル・データサイエンス学部が「受験者がどのくらい集まるのか」・「総合問題がどのような出題になるのか」は、大学受験に携わる仕事をしている人から見れば、今年の入試で注目するポイントの1つになるでしょう。
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