今回はインターネットニュースで取り上げられている「河合塾でストライキを実施すること」が話題となっている。ストライキの内容は、すべての授業ではなく、「5月21日(水)自由が丘校大学受験科4限物理②*」の授業で行われる可能性があり、河合塾の緊急のお知らせに公表されており、通常より15分早く授業を終了するストライキを実施するという内容でした。このストライキを実施する背景として、「労働賃金」と「雇用形態」に関する内容で、今回は現実的に解消可能であるかをブログで書いてみようと思います。
まず1点目の要求は、労働賃金の賃上げで「1分あたり35円の賃上げ(時給2100円の値上げ)」を要求しています。実際に会見では、河合塾ユニオンの物理科講師竹中先生はコマ単価約1万7000円(時給:約11000円)という状況が少なくとも10年以上続いていると述べています。時給に換算すると約11000円と聞くと、かなり貰っていると思われるかもしれません。しかし、若手や年次が低い講師は、実際にコマ単価を1万円超えない講師も多くいるため、労働条件はさらに悪い状態の講師も多くいるのが現実問題としてあるでしょう。このように考えると、講師の現状を考えると、改善をするべきだという意見も出てきますが、時給2100円のアップすることは、いくら河合塾でも厳しいのが現実ではないでしょうか。理由の1つとして、業界全体でこれから収益を出すことが難しくなることが予測される中で、コマ給を上げることは物理的に可能は出来るが、日本の社会構造として「勤続年数と給料」は緩やかであっても給料に反映する傾向が強いため、なかなか上げた給料を下げることは難しいことが背景としてあるでしょう。
ここまでコマ給についてお話をしましたが、そもそもコマ給という考え方に違和感がある方もいるのではないでしょうか。そもそも給料は利益の中で補填をするもので、利益が大きければ給料が多くすることが出来て、利益が小さければ給料を少なくするのが一般的で、集団授業で利益を測る指標は生徒数であるので、授業の担当生徒数で給料を決めればよいのではないかと思うかもしれません。このような考え方であれば、河合塾側や講師側にも問題が起きないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、講師を雇用している塾や予備校の場合は、講師は本部が決めた時間割で校舎に出講をして授業をしているため、校舎運営や募集活動は校舎に勤務している社員が行っているのがほとdんです。つまり、コマ給という考え方を無くすと、従来通りの方法が機能しなくなり、コマ給という考え方が現実的な考え方になっいるのでしょう。
少し話は脱線をしますが、私は大学生のときに集団授業の塾で勤務をしていましたが、受講人数によって時給が異なっており、6名以上の授業は2100円、3名~5名の授業は1600円、2名以下の授業は1200円で、予習などの授業準備は同じ時間がかかるのに、受講人数で給料が異なることや体験授業に来た生徒を入れることだけしか募集活動として貢献が出来ない中で、なかなかシビアな賃金システムだと思いましたが、塾の社員として働くと、経営という観点で考えれば当たり前のことかもしれないと思いました。
そんな中で1点目の労働賃金の賃上げを実行を実現するためには「利益を増やす」または「支出を減らす」または「利益を増やし支出を減らす」のいずれかしかありません。まず「利益を増やす」施策は「職員と講師が募集の連携強化をしていくこと」であり、最低賃金保障をコマ給として、昨年度と今年度の比較をして増加している講座は報酬として払うシステムです。私の大学生時代のアルバイトのように募集として関わりが出来なければ、運営側が一方的に押し付けた内容になってしまうので、講師は授業だけでなく、最低週1回は校舎の募集業務に携わるような運営をするということです。もちろん、講師は教えることが仕事の主であるため、賛成をしない講師もいるので、希望制にして、今まで通りに授業だけしたい講師は、そのままで良いと思います。ここで、講師に校舎募集に携わる理由の1つには、講師から職員のせいで生徒が集まらないので給料が増えないというように言われることを避けるためです。つまり、働き方の自由度をもたせることで、相手がダメなら自分がやれば良いという姿勢を作らせることが大切だと思います。次に「支出を減らす」施策は、市場規模を減らすため、かなりネガティブではありますが、「収益が取れない講座を廃止する」ことですが、この施策は授業のコマ数が減るため、根本的な解決にはなっていないので、得策とは言えないでしょう。つまり、労働賃金を上げるためには「利益を増やす」以外の選択肢はないのです。今後、市場規模が縮小する中で、いかに顧客獲得争いは激化するため、ますます重要になっていくことになるでしょう。
次の2点目と3点目の要求は、「委託契約講師が私学共済に加入できるようにすること」と「委託契約講師にも5年間での無期転換権を認めること」でした。記事にも記載がありますが、河合塾では、委託契約講師(非常勤講師)と雇用契約講師(専任講師)の2種類の契約があります。ここで、委託契約と雇用契約の違いを簡単に説明しておくと、委託契約の場合は、委託する側に指揮命令権がないため、雇用契約者と同じように、業務内容や就業時間、業務の進め方などに対して具体的な指示が出来ないのが特徴です。そのため、雇う側からすれば、安定した労働力確保は難しいことがデメリットとして挙げられるでしょう。このような2つの契約を労働者と河合塾は結んでいますが、現在は私学共済に加入できるのは雇用契約講師であるものを委託契約講師まで拡充することを要求しています(ちなみに、河合塾は塾なのになぜ私学共済が認められるのかと言えば、予備校は学校法人として認定されているため、私学共済に加入することが出来ます。)。しかし、この私学共済は社会保険と同じようなシステムで、事業者と労働者で折半をして支払うものであるため、委任契約講師まで認めてしまえば、河合塾側の負担はより増すことになるので避けたいと考えているでしょう。また、3点目の要求は河合塾側が委託契約講師を止めない本質的な理由に感じますが、これから先の規模が縮小する業界で、コマ数が減っていく中で、簡単にクビを切ることが出来ないからこそ、年数を区切って契約することに背景はあるように思います。まとめると、業界が縮小していく中で、どちらもなかなか難しい要求であることは間違えないでしょう。
このように3つの要求を見てきましたが、なかなか現実的に叶えることは難しいのは間違えないでしょう。このストライキに関して、ネット上では、生徒は関係ないのに巻き込むことに反対意見やストライキは労働者に認められた権利で正当であるという意見など立場によってさまざまな意見が出てくるでしょう。しかし、教育業界として、学校現場を含めて講師の立場が弱いことや非常勤講師などの非正規労働が状態化しているのも事実で、待遇の改善も必要であることは事実だと思います。このストライキによって、業界全体が待遇を考えるきっかけになればよいのではないかと個人的には思っています。
【参考文献】
河合塾で異例のストライキへ 賃上げなど妥結至らず 塾側「生徒らには適切に対処」(産経新聞) - Yahoo!ニュース