昨年度から大学入試改革という政策により、高大接続計画が行われるようになった。その結果、大学入試の形態が大きく変化している。例えば、早稲田大学・政治経済学部、上智大学、青山学院大学などで「総合問題」という出題形式が大きく変わっていった。今回は、実際の上智大学で出題された「総合問題」から、大学入試を分析していき、今後の指針について考えてみたいと思う。
まずは「総合問題」と一括りにされて、議論をされることが多いが、個人的には大きく分けて2つの形式があり、それによって入試対策は異なると私は考えている。勝手に2つの形式の名前を付けると、「教科横断型出題」と「学部専門知識型出題」である。もちろん、この2つに完全に分離をすることは難しく、どちらの形式で含まれるものもあるが、高等学校で習う知識や一般常識で解ける問題は、「教科横断型出題」と分類して考えることにする。このように見ていけば、高校生が特別な対策をしなければいけないのは、「学部専門知識型出題」をされている入試問題であることが分かるだろう。以上のことを考えていくと、総合問題の中でも、「教科横断型出題」ならば、全てとは言い切れない部分もあるが、ある程度は高等学校の勉強で補える部分も多いので、総合問題という形式にはなっているが、対策に苦しむことはないだろう。一方で、「学部専門知識型出題」は対策をするのが難しく、志望する学部の特性を知るために、本やインターネットなどで自ら勉強をすることが求められる。今回は、「学部専門知識型出題」が色濃く出ている上智大学の入試問題から、今後の指針を考えてみたいと思う。
[出典例] 2021年 上智大学・総合人間科学部・社会福祉学科
「社会および社会福祉に関する理解力と思考力を問う試験」
大問1
ノーマライゼーションとは何か、80字以上100字以内で説明しなさい。
大問2
(1) わが国における「社会保険」の種類を5つ書きなさい。
(2) 保険のしくみを説明したうえで、「社会保険」と「民間保険」の違いを160字以上200字以内で説明しなさい。
大問3 [略]
この出題例から分かるように、言葉は聞いたことがあっても説明となると高いハードルがあるだろう。社会福祉学科に行くならば、福祉や保険について、興味や関心があったとしても、対策が不十分だと答えることは難しいだろう。しかし大学入試改革により、このような問題の出題が増えていく可能性は高く、受験生がやるべきことは、大学で「何を学びたいのか」や「何が学べるのか」を具体的に決めることである。当たり前のことを言っているが、高校生の多くは、何となく「心理を学びたいから心理学科」や「物理が好きだから物理学科」といった、現在の自分の興味・関心でしか見ていないこともあり、「大学でどんなことを学ぶのか」に視点が置かれていないのである。さらに、大学のブランドで志望校を決めて、「何を学びたい」のかという視点がないこともある。もちろん、大学のブランドを否定するつもりはないし、就職活動は一定の学歴が必要なことは事実であるけれども、このような総合問題が増えていけば、大学入試ではこのような考え方は通用しなくなってしまうだろう。
以上のことを考えると、志望する学部・学科を知るためにも、今まで以上にオープンキャンパスの重要性は高まるだろう。それだけではなく、高校の授業や塾・予備校でカバーが出来ない部分が多くあり、自分から学ぶ姿勢も求められ、本や新聞などを読むことが求められるだろう。しかし、多くの高校生は、「学校の勉強・部活動・学校行事・英検」などに追われており、時間が足りないのが現状である。このように考えていけば、「学部専門知識型出題」をする大学に出願するためには、志望学部を早期に決めておき、対策をしていく必要がある。高校3年生の秋になって、「どう対策をすればいいですか?」では、はっきり言えば遅いし、出来ることは限られてしまうのである。つまり、総合問題が大学入試に導入されることによって、受験生にとっては、さらに負担を強いられるようになった。しかし、大学4年間や卒業後のことを考えれば、プラスになっていくのだろうか。そうなるのならば、総合問題もいい入試方式と認知されるようになるのかもしれません。